こんにちは。
母の読書感想文シリーズ第1弾です。
今回読んだ本は、小島荘明さんの「寄生虫病の話」です。
「はたらく細胞」が漫画にテレビアニメ、映画と人気上昇中ですね。その中で登場する好酸球さんというシャイな細胞さんが大活躍するのがこの寄生虫に対してなのです。
この本では、寄生虫自体に関する話だけではなく、人間が寄生虫に立ち向かってきた過去とこれからどう闘っていくのかが述べられています。
ノーベル賞を受賞された大村智さんのお名前も登場します。
免疫の仕組みの解説もありますが、少し難しいので時々掲載されているコラムを読むのも面白いです。
では、内容を3つに分けて紹介したいと思います。
日本と世界の寄生虫の種類
まず、日本と世界に存在する寄生虫の種類と症例、その特徴について書かれています。
・サナダムシ→オランウータンから
・広東住血線虫→ナメクジから
・肺イヌ糸状虫症、イヌ回虫症→犬から
・トキソプラズマ症→猫から
など、多くは人間以外の動物から感染します。
特に、食に関わる寄生虫として
・アニサキス症
・顎口虫症
・棘口吸虫症
・肺吸虫症
に興味を持ちました。アニサキス症は特に有名で、「はたらく細胞」で登場する寄生虫もこれです。イカの刺身に細く切り込みを入れる理由の1つに、もしこのアニサキスが付着していた場合でも切ってしまうということでもあるようです。しかし、アニサキスは比較的大きな虫であるため、付着していても肉眼で分かります。また、冷凍することで駆除できますので、身近な寄生虫ではあるものの感染リスクはそこまで高くないと思います。
世界に存在する寄生虫については、主にマラリアと住血吸虫について述べられています。文明の発展に必要不可欠な川からの感染が多く、発展途上国では大きな問題であると感じました。
人間の寄生虫に対する免疫の仕組み
3章では、寄生虫感染における人間の抵抗システムについて書かれています。
「はたらく細胞」でも登場する抗体が寄生虫に対しても産生されるのですが、その仕組みが詳しく載っています。ですが、専門に勉強をしている方ではないと完璧な理解は難しいと思いますので「そうなんだ!」くらいで読んでみると良いと思います。
ここでは、世界で一番人間を死に至らせている「蚊」によるマラリアについても載っています。日本ではなじみのないマラリアですが、地球温暖化によりマラリアを媒介する蚊が北上する可能性があるとも言われています。知っておいて損はない内容であると感じました。
寄生虫病制圧に向けて
戦後の日本では、寄生虫に感染していた人は70%と言われています。そして現在は0.01%以下にまで抑えることができているということで、日本は寄生虫症の制圧に成功していると言えるのではないでしょうか。これらの経験をぜひ世界の発展に役立てられれば良いと思います。
一方で1990年代、小学生だった私もぎょうちゅう検査があった記憶があります。
妊娠中もトキソプラズマ症についての注意喚起があり、一見清潔な環境になった現代日本においてもまだまだ寄生虫症は存在しているのだなと感じます。
これからますますグローバル化が進み、野生の動物と人間との距離がより近くなります。
発展途上国を中心に、新しい細菌やウイルス、そしてこの寄生虫も広がる可能性を秘めています。
オリンピックや万博を控える日本にとって、これらの感染リスクにどう立ち向かうのか、まずは多くの人が正しい知識を知ることから始まると思います。
まとめ
食中毒の原因の1つとして寄生虫がある、ということは知っていましたが、今回この本を読むことで人間の免疫のシステムが寄生虫にも対応していることを初めて知りました。
免疫機構はとても複雑で、なかなかすぐに理解することは難しいですが、少しずつ勉強していきたいと思います。